2012-10-26

面倒を嫌う人々は、極端な結論を好む


 講演では、旗幟鮮明で、言語明瞭で、論旨明快な直言パーソナリティーが喜ばれる。

 人気の高い話者は、「どちらかといえば」とボカすよりは「まぎれもなく」と強調し、「かもしれない」と濁すよりは、「以外のナニモノでもない」と喝破する。その方が客は喜ぶ。だから、上級講演者は、「~の可能性がある」みたいなヌルい語尾は使わない。「~の時代が来る」と断言する。その方が拍手が大きくなる。なぜなら、講演会のパイプ椅子に座っているのは、占い師の水晶玉の前に座っている客と同じタイプの人々で、彼らが知りたいのは科学的な分析や精緻な観察結果ではなくて、一刀両断の直言だからだ。

 留保を含んだ観察や、場合分けを前提とした診断は、情報を受け取る側の人間にとって、知的負荷が高い。

 だから、面倒を嫌う人々は、極端な結論を好む。

「スッキリ!する話に潜む毒」小田嶋隆